手術は、固形がんの局所治療の中では、最も治療効果が期待できる治療です。 固形がんは治療後5年間再発せずに生存できた場合は、治癒となります。 5年生存率(5年後に生存している患者さんの割合)は、がんの種類にもよりますが、がんの進行度でおおよそ決まっており、StageI (早期癌)は80%〜95%、StageII(局所進行癌)は60%〜70%、StageIII(リンパ節転移のある癌)は40%〜50%、StageIV(他の臓器に転移のある癌)は1%〜10%ぐらいになります。 StageIVでも手術で切除できた患者さんではできなかった患者さんでは、5年生存率に差があります。
放射線治療は手術と同じ局所治療ですが、直接は体に傷がつかないことや、全身的な侵襲が少ないことが特徴です。 食道がんや咽頭喉頭がん、肛門がんなどの扁平上皮がんとよばれる病理組織型のがんの場合は、放射線治療と抗がん剤治療と組み合わせて「根治的治療」の選択肢となります。 一方、胃がん、大腸がん、肺がん、肝臓がん、膵臓がん、乳がんなどの場合は、術後再発を予防や、部分的な腫瘍縮小効果により症状の緩和を目指す「緩和治療」として用いられます。 この治療には早期放射線障害として、皮膚・粘膜の炎症と、骨髄への障害がありますが、照射を終了あるいは中断することで1週間ないし2週間のうちに大部分が治まります。 晩期放射線障害に関しては、照射後数か月から十数年たってから起き、主なものには皮膚や皮下組織の萎縮・線維化や潰瘍、肺の線維化による呼吸障害、消化管の潰瘍や穿孔、中枢神経の麻痺などがあります。 晩期放射線障害はすべてを考慮すると放射線治療後の長期生存例の数%におこるようです。
当院では放射線治療の施設はありませんので、放射線治療適応のがんについては、連携病院へ紹介して治療していただいています。
抗がん剤の使用目的は、大きく二つにわかれます。
一つは、手術の治療効果を高めるための補助化学療法と呼ばれる目的、もう一つは進行・再発がんの治療目的です。
補助化学療法は、リンパ節転移があったり、局所が他の臓器に浸潤していたりしていた場合、がんが再発する確率を抑えるために、手術後に行う治療です。
手術後、おおよそ6ヵ月間〜1年間程度行います。
がんの種類によっても異なりますが、5年生存率が10%程度向上する治療となります。
進行・再発がんの化学療法は、根治的切除不能ながんや、再発したがんに対して行う治療です。
食道がんの放射線化学療法のように、「治癒」が望めるがんもありますが、多くの場合、主な治療の目的は「治癒」ではなく「延命」になります。
切除不能大腸がんの場合、無治療で約6ヵ月の予後を、2年ぐらいに延命できる効果があると言われています。
最近でも、いろいろな抗がん剤やその使用方法が開発され、もちろん個人差はありますが、生存期間は以前より格段に長くなってきています。
抗がん剤は、効かなければその患者さんの生存期間に直接影響しますので、胃薬や血圧の薬と違って、常にその最大投与量で開始されることがほとんどです。
つまり最大の効果を得るために、副作用の発現率はほぼ100%と考えていただいてよく、その副作用が認容できるかどうかを基準に、施行するかどうかを決めます。
一般的には、嘔吐や下痢などの消化管症状や、手足のしびれ、皮膚症状、脱毛など、自覚症状のある副作用と、白血球などが低下する骨髄抑制といわれる自覚症状のない副作用があります。
副作用を緩和する支持療法薬も多くありますので、あまり心配する必要もないのですが、重い副作用で化学療法を中止する場合もあります。
乳がんに対するホルモン剤のように、重い副作用がほとんど出ない抗がん剤もあります。
疑問な点があれば、外来化学療法室までお尋ねください。
進行・再発がんの場合、手術や化学療法と平行して、あるいは単独で緩和治療が行われます。
緩和治療は、がんに伴う苦しみを肉体的・精神的に緩和する治療で、がんの治療で最も重要な部分かもしれません。
がんと聞くと、一番不安に思うのは"痛み"ではないでしょうか。
覚悟はできているけど、痛みのないようにしてほしいという声もよく聞きます。
痛みも「肉体的疼痛」の他に「精神的疼痛」や「Spiritual pain」とよばれる痛みもあります。
Spiritual painは日本語にすると「霊的疼痛?」になるのですが、ぴったりの日本語はないようです。
肉体的な痛みに対しては、消炎鎮痛剤などと併用して、医療用の「麻薬」を使用します。
「麻薬」と聞くと、精神的におかしくなるとか、麻薬中毒になるとか、なにかこわいイメージがあると思いますが、全く心配ありません。
ただし、医療用麻薬の使用し始めは、眠気、嘔気、便秘などの副作用がありますが、使用し始めて1週間程度で、和らぎます。
また、これらの副作用を緩和する支持療法薬もあります。
痛みをがまんしていくより、確実に楽になりますので、主治医や薬剤師にご相談ください。
また、がん性疼痛看護認定看護師がおります。
緩和治療に関しては、治療薬よりも看護力が重要な場合が多くありますので、是非ご相談ください。
がんを持ちながら、仕事はできるのでしょうか? がんの治療をしているが、「年次有給休暇や傷病休暇はどう活用すればいいのか」「どれだけ休むと給与はどの程度下がるのか」「職場の仲間にどこまで病気のことを話すべきなのか」といった就労関連の疑問があると思います。 一番大切なことは、患者さん自身が、病気や就労に関する知識を得た上で、自分が今後の人生をどう生きたいのかを考えることですが、自分が生きる道を自分の力で選択することを、社会保険支援労務士が支えています。 詳しくは医療サービスセンターまでお尋ねください。