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お問い合わせ市民病院の外科としてのニーズに応えるべく、がんの治療を中心として、広く外科治療全般に対応しています。
現在、日本国民の死亡原因は、悪性新生物(がん)が約1/3、心筋梗塞や脳卒中などの血管疾患が1/3で、その他が不慮の事故や自殺などになっています。 よって、「がん」はけっして希な病気ではありません。がんの原因は、喫煙、飲酒、食事、運動などの生活習慣要因が約7割で、その約半分が食生活の改善で予防できると言われています。 治療は早期発見が最も重要ですが、進行がんの治療も年々進歩してきています。
がんの種類は大きく分けると、「固形がん」と「血液がん」に分かれます。
固形がんは、胃がん、大腸がん、肺がん、肝臓がん、膵臓がん、乳がんなどの上皮性とよばれるがんと、骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫などの間葉系とよばれるがんに分かれます。
血液がんは白血病、悪性リンパ腫などになります。
がんの種類によって治療方法は異なり、固形がんの場合は、手術、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)、緩和治療を選択、または組み合わせた「標準治療」とよばれる治療を行います。
この「標準治療」は、がんの進行度や全身状態などによって様々な治療を選択していくわけですが、治療の道標となるのが、「がん治療ガイドライン」と呼ばれているものです。
ただし気をつけなければならないのが、ガイドラインに沿って標準治療を行っても、すべての方がうまくいくわけではなく、おおよそ全体の80%のがん患者さんに推奨されるものと考えてください。
また、がんの治療に関しては、新しい技術や薬が開発されると、標準治療そのものが全く変わってしまうこともあります。
標準治療は、従来の治療を科学的根拠に基づいて評価し、有効であることを確認できた治療のみが推奨されていますので、間違いは少ない治療と言えます。
ただ、標準治療以外の治療は行われないのでしょうか?明らかに有害性が有益性を上回るという治療以外は、標準治療以外の治療選択枝もありうると考えています。
一般的に手術で切除しても、治療効果が少ないがんに対して手術を行ったり、科学的に治療効果が評価されていない抗がん剤治療、免疫治療、ペプチド治療などを行うことが標準外治療となります。
標準治療と比べてリスクは高いので、標準治療が無効となった場合や有効な治療法がないと考えられる場合に選択されることが多いと思います。
抗がん剤の効果を比較確認する"臨床試験"も標準外治療になります。
また、健康食品やサプリメントなどの"がんの代替療法(民間療法)"は、有効なのでしょうか。
科学的に評価されていないので、有効性も安全性も不明な場合が多いため、"実際はわからない"となります。
ただ、がんの相補代替療法となる「食事療法」「サプリメントや健康食品」「鍼灸」「マッサージ療法」「運動療法」「心理療法と心身療法」などの有効性と安全性を科学的に評価しようという気運も高まっているようです。
医療者として積極的に勧めることはできませんが、標準治療が無効になった場合、自己責任で"がんの代替療法"をおこなっていただく事はよいのではと、個人的には考えております。
それでは、外科で治療を行うことが多い、固形がんの標準治療について順に説明していきます。
固形がんの治療は大きく分けると、「がんの治癒を目的にする治療」、「延命を目的にする治療」、「がんに伴う症状を緩和する治療」となります。
おのおのが、独立して行われることもありますが、進行がんの場合は、この3つ平行して行われていく場合が多くなります。
早期癌の場合、局所の治療すなわち切除などで、がんが治癒する場合がほとんどです。
進行がんで切除できる場合も治癒が望めるのですが、切除不能ながんや再発がんの場合は、抗がん剤治療をおこないますが、ほとんどの場合、治癒は望めず、主な目的は延命となります(一方、血液がんは抗がん剤で治癒が望めます)。
標準外治療となりますが、抗がん剤治療施後にがんが小さくなったために切除可能となった場合や、物理的に切除ができない深部のがんを陽子線や炭素イオン線などで焼灼できる場合は、治癒が望める場合もまれにあります。
がんの治療も、医学的常識も常に変化しています。
私が医師になって、教えられた事が、現在は医学的非常識になっている事もあります。
ここで述べた内容は、現時点での個人的な意見も多く含まれ、すべて医学的根拠に基づいたものではありません。
日進月歩、がんの治療が変化する中、普遍的にかわらずにがんの治療で最も重要なことは、患者さんを主役として、医療者が良好な人間関係を築きあげ、ともに苦労に立ち向かっていく事ではないかと思っております。
なんとも憂鬱なお尻の病気。
塗り薬だけではよくならない。でも手術は痛そうだしいやだなあと悩まれる方も多いことでしょう。
当院では内痔核の新しい治療法を導入し、従来からの方法と組み合わせて、患者様に痛みや負担の少ない治療を行っています。
主に入院で行う内痔核の新しい硬化療法です。 4段階注射法という特殊な方法で痔核に注射を行い、硬化、退縮させるものです。 傷跡がないため術後の痛みが少ないメリットがありますが、外痔核には効果がなく、内痔核でも状態によっては施行できない事があります。
内痔核、直腸脱などに効果のある新しい手術法です。 特殊な器械で直腸を環状に切除、吻合し、痔動脈の結紮切除と直腸粘膜の切除、つりあげを同時に行います。 肛門の内側での手術になるため痛みがすくなく、早期の退院が期待されます。
従来行われている手術療法です。 腰椎麻酔をかけ、痔核に流れ込む動脈を遮断して痔核を切除します。 陥頓痔核、外痔核など、ほかの療法が施行できない場合も行うことができます。
まずは相談してみよう
男性にとっても女性にとっても相談しにくいおしりの症状(便のとき出血する、違和感があるなど)。
痔核の症状を我慢している方のいる一方で、痔ではない状態(肛門の皮のたるみなど)を痔と思い込んで悩んでおられる方も少なくありません。
薬局で痔の薬を買って使ってみてもどうもすっきりしない、そんな経験がある方も多いことでしょう。
まずは一度受診し、現在どんな状態であるかを知りましょう。
鼠径とは太ももの付け根の部分ことです。
鼠径部にはお腹の中と皮膚の下をつなぐ「鼠径管」という筒状の管があります。
赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいるときには、精巣はお腹の腎臓のあたりにあって、出生前には皮膚の下を通って、陰嚢まで降りてきます。
女児に精巣下降はありませんが、同じ現象が発生します。
鼠径管はこの精巣がお腹を出て降りてくる通り道にあたります。
鼠径と言う字は「ネズミ」の「みち」というかわった漢字を書きますが、これは、胎生期の精巣を「ネズミ」にみたてて、鼠径管という「みち」を通って下降してくる部分ということで、このような漢字になったようです。
この鼠径管がお腹の中と外をつないで通っていることが、鼠径ヘルニアの原因に関係しています。
ヘルニアとは脱出やはみ出しという意味です。
体のどこかが、本来あるべき部位からはみ出しているという場合、ヘルニアといいます。
病気はかわりますが、腰が痛いときによく言われる椎間板ヘルニアは背骨の間の椎間板という組織が脱出するという意味で、これが脊髄など圧迫し、腰痛の原因になっているわけです。
よって、鼠径ヘルニアとは「太ももの付け根からの脱出」と言い換えられます。
現在確認されている最も古い鼠径ヘルニアに関する記述は、紀元前1552年のエジプト時代のパピルスとされており、"咳をすることによって引き起こされるおなかの表面の膨隆…何が飛び出してくるのか? …"という記載が残っています。
子どもの大人の鼠径ヘルニアは原因や治療が若干異なりますので、分けて説明します。
まず、子どもの鼠径ヘルニアの原因ですが、鼠径には鼠径管という先ほどの精巣の通り道があって、これは生後に自然に閉じてしまうものなのですが、これが完全に閉じずに「腹膜鞘状突起(ふくまくしょうじょうとっき)」という腹膜の出っ張りが閉じずに残っていることがあります。
こどもの鼠径ヘルニアの場合は、この腹膜の出っ張りに、お腹の中の腸や脂肪が脱出することが多く、腸が脱出するので脱腸などとも呼ばれています。
まれですが、虫垂や卵巣、卵管などが脱出する場合もあります。
子どもが泣いたり息んだりした時に、ふとももの付け根が腫れる事に気づいた場合は、主治医にご相談ください。
こどもさんは自分では鼠径部の腫れのこと言わないので、お母さんが気づいてあげることが大事です。
ふとももの付け根が腫れる病気には他にもいくつかありますので、鼠径ヘルニアとは限りませんが、ほとんどの場合、診察と簡単な検査で診断はつきます。
鼠径ヘルニア以外に、鼠径部が腫れる病気は他に、リンパ節炎、皮下腫瘍、停留睾丸、精索水腫などがありますが、比較的多いのはリンパ節炎です。
これは、脚から細菌がはいってリンパ管に炎症がおこり、リンパ管とつながっている鼠径部のリンパ節が腫れて痛くなる病気です。
こどもの鼠径ヘルニアは、自然閉鎖する場合もあり、生後9カ月までは経過を見た方がよいと、科学的に分析されています。
しかし、1歳以降ではほとんど自然に治ることがなく、鼠径ヘルニアと診断された場合は、基本的に手術による治療が必要です。
手術は全身麻酔を行い、下腹部の横に走るしわに沿って2cm程度の皮膚切開を加えて、鼠径管内のヘルニア嚢といわれる袋状の腹膜をしばります。
きずは1年後にはほとんど分からなくなります。
鼠径ヘルニアは押さえることで、脱出していた臓器が腹腔内にもどって、その膨らみがなくなる場合が多く、この場合はすぐに手術が必要というわけではありません。
しかし、鼠径ヘルニアはしばしば臓器が戻らなくなる「陥頓(かんとん)」という状態を起こします。
この症状が長引くと鼠径部は硬くなって痛みだし、一度、ヘルニア嵌頓を起こすと脱出した臓器はむくみ、硬くなりお腹の中に戻りにくくなります。
こどもは痛みのため、不機嫌になります。
このような時は両親が、慌てずに抱っこなどして泣かさないようにしてから、時刻に関係なく直ぐに主治医に連絡してください。
最悪の場合は脱出した臓器(特に腸管)の血流が悪くなり壊死することもあります。
その際は緊急の手術が必要となります。
陥頓は生後8カ月から1歳までの間の発生率が高いといわれています。
鼠径ヘルニアと診断されたら、陥頓には十分な注意が必要です。
次は大人の鼠径ヘルニアです。
大人の鼠径ヘルニアの手術は、日本で月に1万件程度の手術がおこなわれている頻度の多い病気です。
こどもと違って、大人の場合は鼠径部に脱出しやすい場所が数カ所あります。
鼠径部にはお腹の中と皮膚の下をつなぐ「鼠径管」という筒状の管があり、この鼠径管が通っている筋膜には、もともとある程度の隙間があります。
加齢や強い腹圧がかかることで、この隙間が開いてきて、この部分から皮膚の下に腹膜や腸などが脱出してしまう場合を、外鼠径ヘルニアと呼びます。
脱出する場所は同じような場所なのですが、鼠径部を支えている筋膜自体が弱ったり、裂けたりして、この部分から脱出するものを、内鼠径ヘルニアといいます。
また、鼠径部には大腿動脈や静脈が通っている筋膜にも隙間があり、この隙間が開いてきて腹膜や腸などが脱出してしまうこともあり、これは大腿ヘルニアと呼びます。
大人の場合はこのように、脱出する部位によって名前が異なるので、これらをまとめて鼠径部ヘルニアとも呼びます。
大人の鼠径ヘルニアの原因は、高齢、やせ、腹圧のかかる仕事、慢性的な咳、喫煙などがあり、サッカー、アイスホッケー、ラグビーなどの激しい運動がいわゆるスポーツヘルニアの原因となることもあります。
鼠径ヘルニアの明確な予防法はありませんが、適度な運動と禁煙が有用といわれています。
大人の鼠径ヘルニアも臓器が戻らなくなる「陥頓(かんとん)」という状態を起こします。 この症状が長引くと脱出した臓器(特に腸管)の血流が悪くなり壊死することもあります。 その際は緊急の手術が必要となり、腸を切除して縫い合わせるなどのリスクを伴う手術になります。 陥頓の発生は年間で1%程度ですが、症状が軽くてもヘルニアを手術しておく理由の一つなっています。
大人の鼠径ヘルニアに自然治癒はなく、手術で治療するか経過観察していくしかありません。 陥頓をおこしたり、痛みなどで生活に困る様な症状がある場合は手術をした方がよいと思います。 市販の脱腸帯で出ている部分をおさえる方もみえますが、精索などが萎縮して不妊の原因にもなりますので、お勧めできません。 痛みがない膨隆などの軽症状の場合も基本的には手術をお勧めしますが、陥頓発生や症状が悪化する危険性が高くないと診断した場合は、経過観察する場合もあります。
手術方法には組織縫合法とメッシュ法があります。どちらも脊椎麻酔または局所麻酔で手術可能です。
組織縫合法は、ヘルニア嚢とよぶ袋状の腹膜を結紮し、隙間の大きくなった筋膜や裂けた筋膜を縫合し、自分の組織を使ってヘルニアを治す方法です。
一方、メッシュ法は、隙間が大きくなったり、弱くなった筋膜を鼠径部の組織に緊張がかからない様に、メッシュといわれるもので補強する方法です。
メッシュはポリプロピレンなどできていますが、最近では軽量で自分の組織とよくなじむような材質になっており、術後の違和感等はあまりありません。
それぞれに短所長所はありますが、組織縫合法よりメッシュ法のほうが、再発率や術後の痛みが少ないため、現在では、組織縫合法はあまり行いません。
ただし、使用したメッシュが感染してしまった時の再手術や、腸管壊死などではじめから汚染された時の手術は、メッシュを使用することができないので、組織縫合法を行うこともあります。
メッシュを用いた手術方法はLichtenstein法 Plug法、PHS法、Kugel法などがありますが、どれも成績に差がなく、受診した病院の一番慣れた方法で手術をしてもらうのがよいと思います。
当院では、kugel法を主に行っています。
最近多く行われる様になってきた腹腔鏡下ヘルニア修復術は、手術時間が長いものの手術後の痛みや、慢性疼痛が軽度で回復が早い事が特徴です。
鼠径部は切開せず、臍と下腹部に小さな穴を開けて、カメラで見ながら、鉗子でヘルニアの入り口にメッシュをあてる手術です。
鼠径部を切開する方法と比較して合併症率や再発率は同等ですが、医療コストは若干高く、全身麻酔が必要になります。
いずれの方法でも、通常は日常生活への復帰は手術翌日から可能で、ジョギング程度のスポーツ活動には3週間程度で復帰できます。